  
(あのゲームが終わってから2年の歳月が流れたが、山本武は相変わらずマフィアをやっていた。彼女と平穏な暮らしを望むのなら辞めることだって、と思ったことだってあったのだが、仲間や部下の顔を思い出せばそれも思いとどまってしまう。彼女より仲間や部下を選ぶのか、とかそういう話ではないのだが、やはり自分はこちらの方が性に合っているのかもしれない。命を狙い、狙われるということが性に合っているわけではなく、単に大事な人を守る為に力を発揮すると言う根本的なところが、楽天的な山本にはこの仕事の方がよりわかりやすい、といったところだろう。――そうして迎えたのは、結婚式の当日。彼女の高校卒業を待ち、山本自身の仕事が落ち着くのを待ってこのタイミングとなった。普段あっけらかんとしている山本も、さすがに緊張を隠せずに一人与えられた控室を忙しなく動き回っていた。白のタキシードに白のネクタイ。普段とは全く真逆の色合いの服装、ということも相まって非常に落ち着かなかった。)あー…やべ、色々忘れてきそー…(式の段取り、手順は幾
度となく確認したつもりだったがここにきてそれらがすっぽりと抜け落ちそうになっているのだ。これはまずい、と頭をがしがしとかいてぶつぶつと独り言を繰り返す。その時外から声が掛けられ、いよいよか、と彼女のもとへ向かうべく部屋を後にする。打ち合わせの時に見た、彼女のウェディングドレス姿。思い出すだけでもかわいらしくって、緊張してるとか言いながらもにやけてしまう自分がいる。2年の歳月で少しだけ大人っぽくなったような気がするのはきっと、勘違いではない。その彼女といよいよこれから結婚式なのだ――)…有?入るぜ?(こんこん、と軽くノックをして返答を待った後に扉を開けた。そこで彼女の姿を見つけたのなら一番に綺麗だ、というつもりで。もしかしたらそれより先に抱きかかえてしまうのかもしれないけれど、その結末を知るのはあと数秒後――)
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